絵本

 旅行記の前に、ちょっと横道。


 雑誌で見かけて気になってしまい、年甲斐もなく思わず買ってしまいました。


「はせがわくんきらいや」


 題名も結構インパクトあると思うんですが、文体が口語の関西弁なのと、そもそも話がヘビーで、決して子供向けだけではない内容です。
ものすごく強いメッセージを感じる絵本でした。


 主人公ははせがわくんをきらいといいます。とろくてすぐ泣くし、ひょろひょろしてるし、歯がガタガタだし、目がおかしいし、、、。
 でも、気になって仕方がなく、ついつい手助けしてしまう。
 っで、その表現が「きらいや」なんです。すごく子供っぽい表現なんだけど、でも、その意味はすごく複雑です。


 背景には実際にあった「ヒ素ミルク事件」というのがあります。
 はせがわくん(作者)はヒ素入りミルクを赤ん坊の時に飲み、その後後遺症に見舞われます。主人公もその意味を完全に理解できていないけれども、彼がディスアドバンテージを負っていることがわかってる。
 だから、気になって仕方がない。


 絵本全体に感じられる「優しさ」があって、そして強いメッセージが伝わってきて、思わず泣きそうになってしまいました。


 でも、今も、これからも、あり得る人災なんだろうなって思う。今知ってる危険は回避できるけど、今知らない危険は回避できないからね。
 一方で、これでも出てる定性的な話は、これだけに偏ると危険だなって思った。
 すべては質と量で話さないと、方向性が極論にいってしまう。危険物質をすべて排除したら、、、たぶん人は誰も生きられません。何も食べられないからね。すべての物質に致死量があるので、危険度は、結局は確率論になってしまいます。たとえば、水の致死量はヒトで10〜30kg/日なので、水を1日に10kgぐらい飲むと結構危険だと思われます。
 ただ勿論ヒ素入りのミルクなんて、とんでもない話です。ヒ素の致死量はすごく小さいので、食物に混入するなんて、あってはならないことです。


 いずれにしても、事実はきちんと残しておくべきだなって思った。
 一方で、昨今のイメージ先行の過剰な排除論は、ある意味で現代社会のゆがみだとも思った。
 そして、過去の過ちは繰り返してはいけないと思う。